トルビズオン社、岐阜県関市にてレベル3.5飛行によるドローン搬送を成功。DJI FlyCart30による災害時非着陸物資輸送を実証

ドローン空路整備事業を手掛ける株式会社トルビズオン(福岡市中央区、代表取締役 増本 衛)(以下、トルビズオン社)は、株式会社糸乗建設(兵庫県豊岡市、代表取締役 糸乘直希)(以下、糸乗建設社)や岐阜県関市の3者共同で、岐阜県関市武儀地区において災害時を想定した「ウインチを活用した非着陸物資輸送」の実証実験を2025年1月16日に実施した。

「ウインチを活用した非着陸物資輸送」の実証実験に成功

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DJI FlightHub 2の画面による本実験の3本の飛行ルート

今回行われた実証実験では、公共施設である武儀生涯学習センターを中継拠点(ハブ)として複数方向へのドローン輸送を実施。
道路寸断リスクの高い山間部においても、迅速・安全に物資を届けられる可能性が確認された。

2018年7月豪雨災害の教訓を踏まえた空路整備とリスクアセスメント、さらにBCP(事業継続計画)をベースとした遠隔地官民連携の重要性を再認識する機会となった。

実験の背景

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出典:関市土砂災害ハザードマップ<武儀地区>

2018年7月豪雨災害の際、岐阜県美濃地方では、梅雨前線による集中豪雨が広範囲にわたり記録的な降水量をもたらし、津保川流域などで深刻な浸水被害が発生した。
中山間地域の狭窄部や道路冠水のリスクが高まり、救援物資や生活必需品の輸送に支障をきたした。

この経験を受け、豪雨災害時でも確実に物資を届けられる新たな輸送手段の確立が当地では急務となっている。
その中で、岐阜県スマート物流推進協議会により、ドローンを活用した実証事業による公募が実施され、糸乗建設社が実施事業者として採択され、関市武儀地区がフィールドとして選定された。

実施概要

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武儀事務所前の離陸現場(レベル3.5飛行対象ルートの離陸地点)

実施日
2025年1月16日(木)

実施時間
10:00 ~ 10:50

実施場所
岐阜県関市 武儀地区
(武儀生涯学習センター、武儀事務所、武儀倉集会所、ハートシティ中濃の杜 ほか)

使用機体
DJI社製「FlyCart30」(ウインチシステム搭載)
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フライトルート

関市武儀事務所 → 武儀生涯学習センター(約2.5km)
武儀生涯学習センター ↔ 武儀倉集会所(約2.5km 往復)
武儀生涯学習センター ↔ ハートシティ中濃の杜(約2km 往復)

本実験のポイント
・中継拠点(ハブ)の活用:道路が寸断されやすいエリアでも、公共施設を中心に複数方向へリレー配送を実施。
・FlyCart30のウインチによる非着陸輸送:狭い着陸スペースが確保できない地域や被災地での安全性を確保。
・BCPをベースとした官民連携:自治体(岐阜県関市役所)、糸乗建設(兵庫県)、トルビズオン(福岡県)が協力し、遠隔地BCPの運用ノウハウの共有・リスク管理を行う。
・レベル3.5飛行の実践:目視外飛行規制の緩和により、輸送効率の向上やオペレーションコストの削減を実現。

各飛行ルートの想定シナリオ

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岐阜県への技術説明

今回の実証実験では、災害対策本部への物資の輸送と、災害対策本部から避難先の住民への物資の輸送の合計3ルートを飛行。
3ルートの各シナリオは、以下の通り。

シナリオ1(災害対策本部への物資の収集の効率化)

大雨による津保川の氾濫のため、関市武儀事務所と関市武儀生涯学習センターの道路が冠水してしまったことを想定。ドローンを活用した災害物資の輸送オペレーションを検証。

飛行距離 | 2.5km
運搬物  | 防災食 5キロ
使用機体 | DJI社製 FLY CART30 × 1機
所要時間 | 5分

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豊富搬送の離陸

シナリオ2(避難先の住民向け毛布搬送)

大雨による津保川の氾濫のため、武儀倉集会所に避難している住民より災害用毛布の輸送の依頼が発生。
関市武儀生涯学習センターから武儀倉集会所への道路が冠水してしまったことを想定し、ドローンを活用した物資輸送が迅速に実行できるかを検証。

離陸地点  | 関市 武儀生涯学習センター(富之保2001番地1)
飛行目的地 | 武儀倉集会所(富之保4411)
飛行距離  | 2.5km(往復)
運搬物   | 毛布10キロ
使用機体  | DJI社製 FLY CART30 × 1機
所要時間  | 5分

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・武儀倉集会所前へのウィンチによる毛布搬送

シナリオ3(避難先の住民向け食料及び水の搬送)

大雨による津保川の氾濫のため、ハートシティ 中濃の杜に居住している利用者より防災食と水の輸送の依頼が発生。
関市武儀生涯学習センターからハートシティ中濃の杜への道路が冠水してしまったことを想定し、ドローンを活用した災害物資の輸送が迅速に実行できるかどうかを検証。

飛行距離 | 2km(往復)
運搬物  | 防災食 50食、飲料水
使用機体 | DJI社製 FLY CART30 × 1機
所要時間 | 5分

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ハートシティ 中濃の杜

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ハートシティ 中濃の杜の荷物受け取り場

結果

実証実験の結果、下記のような結果が得られた。

物資輸送のスピード向上

約2.5kmのルートを5分程度で到達できることを確認。
道路冠水・土砂崩れなど、陸路が使えない場合の即応性が高まった。

・安全性・効率性の両立

ウインチシステムにより着陸不要で物資を吊り下ろし、地上スタッフと連携しながらスムーズに受け渡しが可能な事を確認。
人の作業負担・安全リスクを大幅に低減。

・地域との連携・理解の促進

地域住民や各種施設、自治体による協力体制が構築できたことで、実フライトを円滑に実施。
豪雨災害当時の課題を再認識しながら、今後の防災計画やリスクアセスメントに活かす空路や電波状況等の具体的データを取得

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出典

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