NEDOとKDDI、遠隔操縦者1人が3空域における夜間のドローン3機同時運航の実証に成功。太陽光発電施設での銅線盗難対策など警備業界の人材不足にドローンを活用

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)とKDDI株式会社(以下、KDDI)は、1人の遠隔操縦者がドローン3機を太陽光発電施設3拠点(3空域)で夜間に同時運航する実証(以下、本実証)を2024年12月12日に実施。 本実証は、NEDOの「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」における「ドローンの1対多運航を実現する機体・システムの要素技術開発」(以下、本事業)の一環として実施された。

本実証実験の目的

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NEDOとKDDIが行った本実証では、社会問題となっている太陽光発電施設内の銅線盗難などに対するドローン警備の有用性評価をテーマに、多数機同時運航によるシステム・オペレーション評価を目的に実施。

具体的には、太陽光発電施設3拠点へのドローンポートの配置およびドローンのサーマルカメラを用いた人物検知を行う環境を整えることで、夜間における遠隔地からのドローン多数機同時運航を実現し、ドローンによる夜間警備の有効性が確認された。

今後、機体や運航管理システムのさらなる高度化(自動化・自律化)に伴い、操縦者の役割および運航管理体制も変化することから、本実証の知見を多数機同時運航に関する官民で取り組む制度設計にも役立て、警備業界の人材不足への活用など、ドローンの社会実装に引き続き貢献していくとのことだ。

実証の背景にある太陽光発電所の盗難トラブル

太陽光発電所は敷地面積が広大なため警備人員が多く必要とされるが、日本では2024年問題として警備業界の人材不足が社会課題となっており、人材確保が困難な状況にある。
特に、太陽光発電所は山間部などの人目につきにくい場所に建設されるため、発電所内の銅線ケーブルなどが夜間に盗難される被害が全国で多発しており、再生可能エネルギーの供給が危ぶまれる深刻な社会問題となっている。

そこで、ドローンを活用することで、夜間や人が立ち入ることが難しい場所でも施設警備が可能となり、従来ではカバーしきれないエリアの監視が実現できるのではないかと考えられた。
また、ドローンポートを用いることで、現地に人を常に置く必要なく遠隔での迅速な監視が可能となる。
さらに、1人の遠隔操縦者が複数拠点に配備されたドローンを同時運用することで、警備業界の人材不足問題の解決にもつながることが期待される。

本実証の詳細

本実証は、NEDOが2022年度から推進する本事業の一環として、以下の項目を中心にKDDIが進めている。

(1)1対多運航のシステム要件およびオペレーション要件の検討
(2)1対多運航に対応した運航管理システム開発
(3)飛行実証に向けた許可承認の取得
(4)複数空域における多数機同時運航を想定した飛行実証
(5)1対多運航の事業性検証

ドローンによる夜間警備においては、警備者はドローンのカメラからのリアルタイム映像を見て違和感や異常がないか常に監視する必要がある。本実証では、同時に不審者を検知した場合やシステム異常が発生した場合を模して実フィールドにおいてポート付きドローンによる現地完全無人での運航を検証し、1人の遠隔操縦者による3拠点でのドローン3機同時運航を実現した。

本実証の成果と今後の展望

本実証から得られた成果は以下の4点となっている。

効率的な警備体制の構築

ドローンによる巡回監視により、広範囲を短時間でカバーすることができ、従来の人による巡回に比べて効率が大幅に向上する可能性があることが確認された。

コスト削減

1人の操縦者が複数のドローンを管理することで、警備にかかる人件費を削減することができる可能性があることが確認された。

AI(人工知能)アシスト機能による迅速な対応能力の向上

ドローンの高性能カメラを用いたリアルタイムのAI解析により、異常を即座に検知し、迅速な対応が可能となることが確認された。

異常同時発生時の課題確認

不審者の追跡や機体・システムの異常が同時に発生した場合の課題を確認し、今後のシステム機能や運航管理品質の向上に資するデータを取得することができた。

NEDOとKDDIは、本実証を通じて、夜間警備におけるドローン活用の有用性と、不審者発見時や機体・システムの異常発生時の対応を含む運用手順の有効性と課題を確認。
今後は実証に加え、実環境での複数機の長期運用や運用データの蓄積とさらなる運用改善を進めていき、本実証の知見を、多数機同時運航に関する制度設計にも役立て、ドローンの社会実装に貢献していくとしている。

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出典

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