
DeepForest社、神戸電鉄社と共同で、ドローンを用いた線路沿いの枯死木検出に関する実証実験を実施。検作業の効率化を検証
神戸電鉄株式会社(以下、神戸電鉄社)とDeepForest Technologies 株式会社(以下、DeepForest社)は、線路沿いの枯死木調査の効率化を目的とし、ドローンおよびDeepForest社の森林解析技術を活用した実証実験を実施した。
目次
線路沿いの枯死木調査に関する実証実験について
近年、ナラ枯れなどにより枯死木が増加しているが、特に山間部などの沿線の枯死木が線路に倒れ、列車の運行を妨げるトラブルが増加している。
これを未然に防ぐためには、日頃から沿線の枯死木を把握し、伐採等の処置を施す必要がある。
神戸電鉄社では、この検出業務を作業員の巡回目視点検により行っており、作業に要する手間およびコストが課題となっていた。
今回は、DeepForest社の提供するドローンとAIを使用した森林解析技術を活用し、倒木リスクのある枯死木の位置やサイズを事前に把握することで、これらの点検作業の効率化が図られた。
ドローン飛行
ドローンには市販のDJI社製『Mavic 2 Pro』を使用し、事前に線路に沿って飛行ルートを設計し、自動操縦でオーバーラップを確保しながら撮影を実施。
実証では高度100m、15分間のフライトで約5ha(鉄道沿線400m強)のエリアが撮影された。
画像の3次元合成処理
撮影した画像は、DeepForest社の3次元画像合成ソフト「DF BIRD」を使用して、オルソ画像およびDSM(Digital Surface Model)の作成がされた。
160枚の写真から1時間程度で合成処理が完了した。
また、国土地理院が公開する地面データ(DTM)との差分を計算し、樹木などの高さ情報を示すCHM(Canopy Height Model)の生成も行われた。
枯死木検出・サイズ推定
DeepForest社の森林解析ソフトウェア「DF Scanner」を使用し、ドローンで撮影したデータの解析を実施。
今回の実証では、以下の解析が実施された。
〇オルソ画像から樹冠のポリゴンを生成
〇AIを活用した樹種識別により「枯死木」を検
〇樹高および胸高直径(DBH)を推定
今回の撮影範囲となる約5hでは、20分程で処理することができ、枯死木箇所を高い精度で自動検出することに成功。
また、検出した枯死木の一つひとつに位置情報と樹高情報が紐づいているため、線路からの距離が近い樹木のみを抽出する、倒木時に線路に到達するかの判定ができることも判明した。
これにより、枯死木の本数や分布の定量的な確認が可能になるため、危険度の高い箇所を優先的に見つけることができるようになったとのことだ。
枯死木の検出結果(拡大)
枯死木の検出結果(縮小)
解析結果を使用した現地調査
DeepForest社の現地調査用アプリ「DF Walker」に解析した結果をインポートし、枯死木検出箇所の現地確認デモを実施。
同ソフトは、スマートフォンおよびタブレットに入れて使用するアプリケーションであり、GPSと連携して現在地を表示しながら、オルソ画像やDF Scannerの解析結果を確認することが可能となっている。
DF Walkerを使用することで、目標箇所(枯死木検出箇所)への到達が容易になり、また、解析結果と現地の状況が一致していることが確認された。
アプリ上でファイルを作成する機能もあるため、解析では検出できなかった場所の記録にも活用できることがわかった。
DF Walkerに解析結果を取り込んだ様子
実証実験のまとめ
本実証実験では、ドローン撮影した画像から枯死木を高精度に検出することに成功した。
これにより、従来の点検作業に比べ、より効率的かつ正確なリスク管理が可能となることが期待される。
鉄道沿線の点検作業は、場所によっては危険を伴うケースや、列車のダイヤの影響を考慮して限られた時間内で実施する必要がある。
今回の手法は、ドローンを活用することで作業員による現場での作業量を減らし、短時間かつ安全に解析することが可能となる事が判明。
また、定期的なドローン撮影およびデータのデジタル管理の仕組みを確立することで、時系列での森林状況を把握することができ、今回の枯死木検出以外の目的においても、効率的な鉄道林管理(ゾーニング・プランニング等)への活用が期待される。
ソフトウェアの提供を通じて、誰でも簡単に森林解析ができるソリューションを提供しているDeepForest社。
今回の枯死木検出作業を含め、ドローンとソフトウェアを導入することで、少ない作業コストでも自分たちで森林を管理することが可能とし、今後もより実用的なソリューションとして提供をしていけるよう技術開発を進めていくとしている。
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出典