
Triple Bottom Line社、ドローンを用いた鉄道点検ソリューション『Project SPARROW』のビジョンコンセプトを公開
ジェネレーティブデザインを中心にプロダクト設計を手掛けるデザインスタジオの合同会社Triple Bottom Line(本社:東京都杉並区、代表:柳澤 郷司)(以下、Triple Bottom Line社)は、株式会社Liberaware(本社:千葉県千葉市、代表取締役 閔 弘圭)(以下、Liberaware社)が技術検証を進める鉄道環境に対応したドローンを用いた鉄道点検ソリューション『Project SPARROW』の一環として開発を進める、次世代鉄道点検ドローンのビジョンコンセプトデザインを手がけ、公開した。 本プロダクトは、2025年夏に大阪で開催する国際博覧会のブースにて展示される。
目次
鉄道点検ソリューション「Project SPARROW」について
国際博覧会のブースでの展示の予定図
『Project SPARROW』は、鉄道インフラの老朽化、保守・点検作業員の高齢化と人手不足という社会課題に対応するために発足されたプロジェクト。
これまで人の目と手に依存してきた鉄道インフラの点検作業は、危険と隣り合わせの作業環境や、深夜・早朝の時間帯に集中するなど、労働環境の改善が喫緊の課題となっている。
このプロジェクトでは、狭小空間に特化したドローン技術、光学センサーによる地形・構造物データ化技術、そしてスマートドローンの遠隔制御技術を結集し、国内の鉄道沿線のレールや付帯設備を自律的に飛行しながら点検するシステムの実現を目指している。
これにより、作業員の安全確保、点検精度の向上、作業効率の抜本的改善を同時に達成し、持続可能な鉄道インフラ維持管理の新たなモデルを構築している。
『Project SPARROW』についてはこちら
大阪国際博覧会における『Project SPARROW』ブースの詳細はこちら
思想からカタチへ — AIとの共創によるデザインプロセスの革新
先進性・親和性・安全性という基本理念が据えられている『Project SPARROW』。
Triple Bottom Line社はこれらのコンセプトに対し、得意とする「思想からカタチへ」というアプローチを採用。
抽象的な理念を具体的な形状へと変換し、実用性と美しさを兼ね備えたドローンのビジョンコンセプトを設計している。
ドローンの運用に関わる重量、剛性、安全性などの技術的要件を数値化し、それらを満たす機体構造の検討にAIを用い、得られた結果を人の手でリファインすることで、従来の設計手法では到達できない新たな形状を実現した。
基本理念については、以下の通り。
社会との共存
民間住宅地域の上空も飛行するため、メカニカル印象を抑え、市民に受け入れられる親しみやすさを持つこと
信頼性の可視化
安全性や先進性を、形状自体から直感的に理解できるデザインであること
実用性の追求
美しさだけでなく、実際の運用を想定した堅牢性と機能性を併せ持つこと
AIをプロダクトデザインに活用する際には、単に見た目の斬新さや話題性を追求するだけでなく、プロジェクトの本質的な目標に貢献することが重要である。
Triple Bottom Line社は、「見えないリスクを可視化する」というLiberaware社のビジョンと、「誰もが安全な社会をつくる」というミッションを基盤として、デザインの方向性を設定。
技術とデザインの両面から実現可能な解決策を追求したものになっているとしている。
近年急速に発展したAIを用いたジェネレーティブデザインは、多くの可能性を秘めているが、効果的に活用するには専門的な知識と経験が必要となる。
最適なパラメーター設定や生成された多数の選択肢から要件に応じた適切な選定といった技術的制約と美的要素の両立には、デザインの深い理解が求められる。
Triple Bottom Line社は、自然界の構造原理を数理的に分析し、製造可能性と経済性を考慮しながら実用的なプロダクトへと変換するアプローチを確立。
デジタル技術と人間の創造性を組み合わせることで、従来の方法では到達できなかった革新的なデザインソリューションを提供したものとなっている。
自然からの着想と先進性の融合
本ドローンの特徴的な姿は、Triple Bottom Line社が長年研究している「Trans Nature」の概念に深く根ざしたものだ。
これは自然界に見られる構造や現象を数理的に表現し、その原理を現代のテクノロジーで再構築するアプローチとなっている。
ドローン機体中央部の滑らかで有機的な形状は、液体が自然に形成する泡構造の原理を応用。
泡は内部圧力と表面張力のバランスにより、最小限の表面積で最大の空間を確保するという最適化を自然に行う。
この原理をドローン設計に取り入れることで、多様なセンサーやカメラ、通信機器などを効率的に内蔵しながらも、国内の鉄道の線路幅として一般的な狭軌・標準軌に収まるサイズで実現したという。
また機体中央から放射状に広がる4本のアームは、AI技術によって試算された3,000を超える設計案から練り上げ、各アームは応力分布を最適化するよう微妙に湾曲し、最小限の素材で最大限の剛性を確保している。
単なる自然の模倣ではなく、自然の原理を理解し最新技術で再解釈した結果で、AIと人間が協働するデザインプロセスは、従来の経験則や先入観にとらわれない視点をもたらし、新たな可能性を開く手段となっているという。
この手法により、重量、強度、製造性などの条件を満たしながら、美しさも兼ね備えた形状を生み出している。
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出典