ZenmuTech社ら3社、国産技術を用いた次世代ドローン・セキュリティの実証試験に成功

株式会社ZenmuTech(代表取締役社長CEO:田口 善一、本社:東京都中央区、証券コード:338A)(以下、ZenmuTech社)とネクストウェア株式会社(代表取締役社長:豊田 崇克、本社:大阪市中央区、証券コード:4814)(以下、ネクストウェア社)および株式会社アイ・ロボティクス(代表取締役社長:安藤 嘉康、本社:東京都渋谷区)(以下、アイ・ロボティクス社)による共同チームは、ドローンに秘密分散技術を搭載して飛行中のリアルタイムデータを高度に保護することを前提とした実証試験に成功。 これにより、ドローンが送受信する映像や制御信号、機体内に記録されるデータをリアルタイムに“無意味化”することで、サイバー攻撃や機体の紛失時にも情報漏えいを防ぐシステム構築への目途が立ったと発表した。

次世代ドローン・セキュリティの実証試験について

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インテグリティ・ドローン システム図

本実証試験により、秘密分散技術が安価・軽量・鍵管理不要かつ既存ドローンへの後付けが可能であることが証明された。
これにより、産業現場への即時導入が期待できる実践的なセキュリティソリューションとなることが証明された。

国産ドローンの競争力向上に加え、セキュリティ上の課題を抱える海外製ドローンの安全な国内利用も促進される見込みとなっている。

本実証試験は、2022年6月にZenmuTech社、ネクストウェア社、アイ・ロボティクス社の3社で発表されたインテグリティ・ドローンの拡張進化版である。
今回の実証試験の結果は、一般財団法人機械システム振興協会から一般社団法人ソフトウェア協会が受託した令和6年度イノベーション戦略策定事業の成果に基づくものとなっている。

3社は、引き続きオープンイノベーションによる技術展開と事業拡大を図るとともに、将来的には、防衛・安全保障領域への応用も視野に入れ、ドローン活用の新たな可能性を切り拓く革新的かつ未来志向のセキュリティ技術として展開を予定している。

背景と開発の目的

ドローン技術の発展により、インフラや工場、倉庫での効率的な点検・警備や無人輸送が進む一方、海外製ハードウェアへの依存やデータセキュリティの課題が浮上している。
特に、紛失や盗難による機密データの流出リスクが顕著であり、基幹インフラや重要施設での使用が深刻なセキュリティ問題を引き起こしている。

ドローンが蓄積する位置情報や撮影データを解析することで、インフラの詳細状況を把握可能だが、これらのデータが漏洩した場合、重大なリスクとなる。
さらに、屋内外での遠隔操作を可能とするドローンの開発が進む中、紛失のリスクが一層高まっている。

このような背景から、リアルタイムでの保護が求められるドローンのデータを守るために着目されたのが「秘密分散技術」である。
開発チームは、ZenmuTech社の開発した国産の秘密分散技術「ZENMU-AONT」をドローンに適用することで、産業界が直面するセキュリティ課題を解決し、日本製ドローンの信頼性向上と安全な社会実装を促進することを目指した。

実証試験の概要

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ドローン内部構造を模したシステムを構築し、大阪城の模型の映像をシステム内に保存と通信を実施。
保存媒体及び通信経路は複数経路にわたって構築されており、それぞれにおいてリアルタイムに秘密分散の有無、秘密分散適用時の時間分散、マルチチャネル化、ストレージの物理的分散化などを試験した。

結果として、ドローンを模したリアルタイムの秘密分散化においても、ドローンの機能を全く阻害することはなく、秘密分散による極めて高いセキュリティ水準が実現できることが証明された。

本技術実証のポイント

1)海外製ドローンにも後付けが可能な高度セキュリティ
小型の秘密分散モジュールを搭載するだけで、手頃なコストで既存機体に高水準のデータ保護機能を既存ドローンに付加することが可能。
複雑な鍵管理や電力消費の多いハードウェア暗号装置が不要となる。

2)通信・記録データのリアルタイム無意味化
ドローンの映像ストリームや制御コマンドを飛行中にリアルタイム処理し、断片化されたデータ片のみを機体内外に保存することが可能。
万一通信が傍受されたり機体が盗難・捕獲されたりしても、断片単体からは意味のある情報を一切復元できない。

3)なりすまし攻撃の無効化
ドローンのコマンド通信の認証性を飛躍的に向上させることで、不正な指令による乗っ取りを防止。
国内開発技術のため、機密情報の取扱いにおいて国外製品に頼らない安全性担保にも貢献する。

4)優れた安全性かつ耐量子性
今回用いた秘密分散技術「ZENMU-AONT」は鍵暗号とは異なり、計算量的安全性を持つデータ保護方式だが、国内外の学会で認められた安全性を持っている。
鍵を使わず複数の分散片に情報を分割するため、たとえ計算能力が飛躍的に向上した将来の量子コンピュータであっても、十分な分散片が揃わなければ元データを解読できない。

世界でも類を見ない固有の成果

本実証試験では、市販のドローン機体に開発した秘密分散ソフトウェアを搭載し、飛行中のドローンを模したシステムを利用。
撮影映像と制御コマンドをリアルタイムで分散処理することに成功している。

具体的には、カメラ映像を複数のデータ片に高速変換し、一部を逐次無線で地上局に送信する一方で、一部を機体内に保持するシステム概念の検証や、第三者が途中でコマンドを傍受したとしても無意味化されており改ざんできないことの検証を行っている。

これらにより、ドローンの通信も記録も常に無意味化された状態で保護されていることが実証された。
試験中、意図的に通信を遮断して機体を強制着陸させるシナリオを設定し、機体回収後に内部ストレージを解析しようとしたが、撮影データは分散片の一部しか含まれておらず完全に無意味であることを確認した。

また不正なコマンド信号を送り込む攻撃に対しても、機体側で分散復元できなかったため無効化され、なりすまし操作が封じられることを確認。
以上の成果は、秘密分散技術によるドローンの包括的防御が現実の飛行環境下で有効に機能することを示す、世界に類を見ないものだと発表された。

技術的な優位性と特徴

今回実証されたソリューションの技術的な優位性は以下の通りである。

①鍵管理が不要
秘密分散技術では、複雑な鍵の配布・保管・更新管理が不要。
鍵漏えいや不正取得によるリスクを根本から解消する。

②軽量で高速な実装
本技術はソフトウェア実装が非常に軽量で、ドローンのCPUやメモリ負荷は僅少であることが証明された。
そのためドローン内部におけるリアルタイム処理が可能で、映像遅延やバッテリー消費増といった運用上のデメリットもない。

実際の飛行実証でも、通常運用時と遜色ない滑らかな映像伝送・機体制御が確認されている。

③高い汎用性と後付け適用
機種やメーカーを問わず幅広いドローンに適用できる可能制を保持しており、既存機体への後付けも容易。
ソフトウェア更新や小型のペイロードモジュールの追加で対応できるため、新たなハード開発コストを抑えつつ既存資産にセキュリティ強化を図れる。

理論上は自動運転車や警備ロボットなど他の遠隔・自律型機器にも同様に適用可能だ。

④量子時代を見据えた安全性
本技術は前述の通り将来量子コンピュータが実用化され暗号が破られるような局面でも安全性が揺らがない。
ドローンなどが捕獲されて圧倒的な計算量的攻撃が仕掛けられてもドローン内部の機密データが漏洩することはない。

⑤国内開発による信頼性
コア技術は国内企業および研究機関が開発・実証したものであり、バックドアのリスクや輸出規制による制約がない。
国家レベルの安全保障ニーズに応えるセキュリティ基盤として国産技術の強みを発揮する。

これにより、海外製ドローンを国内運用する際のデータ流出リスク低減にも繋がり、安心して導入できる環境整備に寄与する。

今後の展開

本技術をさらに実用段階へ引き上げ、産業界で広く活用していくために、3社はハードウェア実装とエコシステム構築を次のステップと位置付けている。

1.専用チップ化・機体組込み
秘密分散処理を担う専用の超小型チップを開発し、将来的にドローンの標準搭載コンポーネントとして提供していくことが計画されている。
ハードウェア化によりさらなる高速化・省電力化が期待でき、大量のドローンへの一括実装や軍事グレードでの信頼性確保にも繋がる。

2.ソフトウェアSDKの提供
ドローンメーカーやサービス事業者が本技術を容易に導入できるよう、秘密分散アルゴリズムをライブラリ化したソフトウェア開発キット(SDK)を準備中。
これにより、各社の機体制御アプリやクラウドプラットフォームにセキュリティ機能をシームレスに統合でき、エコシステム全体で安全なデータ利活用が可能になる。

3.標準化と普及ロードマップ
国内外の標準化団体や業界コンソーシアムと連携し、本技術の安全基準策定や標準プロトコル化を推進する。

国産の秘密分散技術「ZENMU-AONT」について

秘密分散技術とは、重要なデータを「それ自体では意味を持たない複数の断片(=分散片)」に分割し、それら分散片を別々に管理・保存することで、許可された組み合わせが揃ったときにのみ元のデータを復元できるようにする情報セキュリティ手法となっている。

代表的な秘密分散の方式としては、データを複数に分散し、あらかじめ復元のために必要な分散データ数の閾値数を決めるシャミアの閾値分散方式などが知られているが、今回の実証試験で採用したZenmuTech社の開発した国産の秘密分散技術「ZENMU-AONT」は全ての分散片が揃わなければ一切の復元が不可能であることが特徴であり、特定の断片を破壊または隔離するだけで残りの断片を完全に無意味化できる。

これにより、たとえドローン内部のストレージやドローンとの通信経路が侵害されても、攻撃者は何も得られないという強固なデータ保護が可能となる。

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出典

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