八幡営農社と国際ドローン協会が業務提携を締結。人材育成と地域に根ざしたスマート農業の実装を目指す

株式会社八幡営農(代表:前田祥道)(以下、八幡営農社)と一般社団法人国際ドローン協会(代表理事:榎本幸太郎)(以下、IDA)が業務提携を締結を発表。 両社の強みを活かした新たな事業展開を開始するとしている。

八幡営農社とIDAの業務提携について

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(写真右)株式会社八幡営農 代表 前田祥道 氏(写真左)IDA代表理事 榎本幸太郎 氏

八幡営農社は、日本では気候的に栽培が困難とされ、大半を輸入に頼っているパスタ用デュラム小麦の国産化に挑戦しており、日本で初めて品種登録され自社で栽培したデュラム小麦(セトデュール)を原料にした「加古川パスタ」の製造・販売を展開している。 
しかしながら、デュラム小麦は乾燥した気候を好み、高温多湿な日本では赤カビ病などの発生により安定栽培が難しいという課題が存在していた。
このような栽培上の課題を乗り越えるために、IDAが持つドローンおよび農業デジタル技術のノウハウを導入し、デュラム小麦の安定生産と地域農業の高度化を目指すとしている。

IDAの技術支援内容

IDAはこれまで約10年にわたり、ドローンを活用した農業支援を国内各地で実施してきた。
今回の提携では、以下の先進的な農業DX技術を八幡営農社に提供する。

●スペクトラムカメラによる作物の生育状況分析と病害兆候の検知
●施肥・防除の最適タイミングの可視化と管理
●航空測量による農地のオルソ画像生成と地形均平解析
●ドローンによる超精密な薬剤散布技術
●作業履歴や薬剤使用量のデジタル記録と活用

特に、IDAが2024年に千葉県東庄町で実施した4機体制・約1,000haの大規模防除作業は、すべて国家資格を有するパイロットが担当。
国内における最先端スマート農業モデルの確立事例として高く評価されるものとなっている。

人材育成と農業の未来へ向けて

この提携における中核的なテーマの一つが、「人材育成と地域に根ざしたスマート農業の実装」となっている。

今後、自社内でドローンを活用した薬剤散布業務を本格的に展開していく方針を掲げている八幡営農社。
農作物の品質向上、病害防除の精度向上、省力化・効率化を追求する中で、ドローン技術を単なる外注サービスとしてではなく、自社業務として取り込み、ノウハウと人材を蓄積していく戦略とみなしている。

これに対し、IDAは「ドローン技術の現場定着」を目的に、操縦技術の習得から国家資格の取得、現場での実践運用まで一貫した支援体制を構築している。
特にIDAでは、農業用ドローンの操縦に国家資格「一等/二等無人航空機操縦士」の取得を必須とする独自のポリシーを採用している。

現行の航空法では、農業用ドローンによる薬剤散布は国家資格を持たなくても可能とされているが、IDAはこれに対して以下の理念を持っている。

◎第三者の理解と信頼を得るための「見える安全性」
◎操縦技術と知識の高度化による事故防止と作業精度の最大化
◎社会全体でのドローン理解の促進と業界標準の引き上げ

2024年に実施された千葉県東庄町での約1,000ヘクタールの大規模防除作業では、4名のすべてのパイロットが「一等無人航空機操縦士」資格を有しており、無事故・高精度の実績を達成した。
こうした事例は、農業の現場におけるドローン活用の信頼性を社会に示す重要なモデルケースである。

八幡営農社においてもすでに、IDAで訓練を受けた人材が薬剤散布に従事しており、今後さらに社内から新たな操縦者を育成し、持続可能で自立したドローン運用体制の構築を目指す。

また、IDAでは、以下のような実践的・多角的なスキルを磨く育成プログラムが組まれている。

〇農薬・肥料の種類や希釈倍率、適正使用方法に関する知識
〇スペクトラムカメラを用いた病害の早期発見と生育分析
〇航空測量・オルソ画像の生成と圃場均平の判定
〇ドローン機体の保守整備、トラブル時の対応
〇散布量・生育履歴などのデータ管理と経営分析への応用

これにより八幡営農社は、単なる操縦者の育成にとどまらず、経営判断や施策立案に資するデータを現場から生み出せる「農業DXオペレーター」を自社で育成・配置する体制へと進化していくとしている。
今後は、薬剤散布業務に加え、ドローンを活用した農地調査や播種支援、物流支援に防災対応などにも応用範囲を広げる構想がある。
IDAとの連携を軸に、地域農業の新しい担い手像のモデルケースとして「自立型スマート農業法人」の確立を目指すとのことだ。

今後の展望

今回の業務提携を通じて、両者は「デュラム小麦の国産化」という前例の少ない挑戦に挑みながら、農業の省力化・デジタル化・次世代化を推進していく。

八幡営農社は今後、ドローンによる薬剤散布事業の自社展開を本格化させ、IDAとともに「農業の持続可能な未来づくり」に貢献する。
また、地方から日本の農業の未来を切り拓くモデルケースとして、地域農業のブランド力強化、人材育成、6次産業化の推進を目指していく。

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出典

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