Elsight社、多発する自然災害・インフラ老朽化・人材不足…日本を取り巻く課題にドローンで挑戦。世界各地の支援実績のレポートを一部公開

イスラエル発のドローン/UAV(無人航空機)の通信技術を手がけるElsight Ltd.(本社:イスラエル・オル・イェフダ、CEO:ヨアブ・アミタイ)(以下、Elsight社)は、ドローン/UAV(無人航空機)の目視外飛行に必要な通信プラットフォーム『Halo』を提供している。 そして、世界各地で行っている支援実績のレポートの一部が公開された。

Elsight社が提供する『Halo』とは

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『Halo』は、ドローン/UAV(無人航空機)の目視外飛行に特化して設計、特許取得されているLTE、5G、衛星通信、無線通信を統合可能なプラットフォームだ。
使われる技術は、BVLOS(Beyond visual line-of-sight)接続の提供となっている。

その最大の強みは、複数の4G/5Gネットワーク・衛星通信・場合によっては無線通信(RF)などを統合し、途切れない接続を保証する点だという。

どのようなドローン/UAV(無人航空機)でも、通信が遮断されれば「失踪」してしまうため、「どんな環境でもつながり続ける」ことは非常に重要となる。
そして、『Halo』の技術は、オペレーターがリモコンを手にしてドローンの近くに立つことなく、コンピューター画面の向こう側で、世界のどこにいても飛行が可能とする。

また、一人のオペレーターが同時に多くのドローンを管理することもでき、すでにヨーロッパやアメリカ、中東等において最新のドローン製品への普及が進んでいる。

世界の自然災害・インフラ設備点検で活躍する『Halo』

アメリカ・フロリダ州がハリケーンHeleneの直撃を受けた直後、被災地の状況をいち早く把握し、復旧活動を進めることが急務となった。
しかし、道路は倒木や浸水でふさがれ、人が現場に近づくことすらできないエリアが多く存在していた。

そこで、災害対応に特化したドローン運用を行うCensys Technologies社が、Elsight社の『Halo』通信プラットフォームを導入した。

飛行距離が5倍に。人の立ち入りが難しい被災地まで一気にカバー

従来のドローンは、従来のドローンは目視範囲内、つまり4マイル(約6.4km)前後までしか飛行できなかった。
しかし、『Halo』を搭載することで、最大20マイル(約32km)以上の遠隔飛行が可能となった例も。
これにより、ヘリや車両ではたどり着けないエリアでも空から迅速に状況確認ができるようになった。

リアルタイムで高精度な被害情報を共有

甚大な被害の発生する自然災害発生時など、迅速な意思決定が求められる現場では、リアルタイムでの情報共有が生命線となる。

『Halo』のプラットフォームは、複数の通信回線(5G、LTE、衛星)を統合し、高解像度の画像や状況データをリアルタイムで収集し、指揮チームへ即座に転送することを可能にした。
これにより、救助チームは現場の状況を正確に把握し、適切な判断を迅速に下せるようになった。

人員の現地派遣を削減、安全性とスピードを両立

災害現場では、スタッフの移動に多くの時間とコストがかかることに加え、危険地域に向かうための安全確保が大きな課題となっている。
しかし、『Halo』を搭載したドローンにより、従来は人力で行っていた被害範囲の確認や状況の把握が自動化され、現場への人的負担を大幅に軽減することが可能となった。

結果として、人員の移動リスク・時間・コストを大幅に削減しつつ、救援や復旧のスピードを格段に高めることに成功した。

政府からの緊急承認(SGI免除)を取得

通常、視界外飛行(BVLOS)には厳しい規制が課せられているが、『Halo』の安定通信と安全運用実績をもとにFAA(米連邦航空局)からSGI免除を取得。
この特例により、規制を超えて早期にBVLOS飛行を実現し、被災地への即応体制を整えることができた。

Elsight社の『Halo』は、このプロジェクトを通じて

  • “人が近づけない場所でも、空から広域・リアルタイムで安全に状況を把握”することを可能に
  • 災害復旧の初動を数時間〜数日単位で短縮
  • 自治体・救援部隊の迅速な意思決定と行動を後押し

することに成功したと発表している。

全米規模のインフラ点検

アメリカでは、何百キロにもわたる天然ガスや原油のパイプラインが、山中や人里離れた地域を通って敷設されている。
これらのパイプラインが「壊れていないか」「ガスが漏れていないか」を定期的に点検することは、爆発事故や環境汚染を防ぐうえで極めて重要。

しかし、地上から目視で点検するには、途方もない距離を移動する必要があり、人件費も高く、時間もかかるといった課題がある。

そこで、Phoenix Air Unmanned社が採用したのが、『Halo』通信プラットフォームだった。

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Phoenix Air UnmannedはEvent38 UASを操作し、320マイルのパイプライン検査を1日で実施。画像:Phoenix Air Unmanned

実際の運用事例

Elsight社は、Phoenix Air Unmanned社が実施する大規模なインフラ点検プロジェクトにおいて、『Halo』プラットフォームを提供。
これにより、従来の技術では困難だった以下の成果が実現された。

1日で320マイル(約515km)のパイプラインを点検

通常であれば複数日かかる長距離の点検作業を、『Halo』搭載のドローンが1日で点検を終える事に成功。

通信が届かない“僻地”でも安定した飛行を実現

山間部や人の住んでいない広大な土地では、「通信が切れること」は、「ドローンの失踪」に繋がり、点検の実施ができなくなってしまう。

『Halo』はLTE、5G、衛星通信を同時に使って「途切れさせない」を実現している。
特定の通信が一時的に不安定になってもLTE/5Gの通信、衛星リンクなどと繋がることで飛行を継続することができる。

点検中の映像やガス漏れデータをリアルタイムで送信

ドローンにはLiDARや光学ガスイメージング(OGI)といった高精度センサーが搭載されており、パイプラインの形状やガス漏れの兆候を正確に検出。
これらのデータを飛行しながらリアルタイムで地上の運用センターに送信。即座に異常の判断ができる体制を構築した。

人員の現場派遣が不要に

通常であれば、点検のためにトラックやヘリで現場へ向かい、何時間もかけて人が歩き回って調査する必要があった。
『Halo』を利用したことで、現場に人が行かずとも、広範囲の状況を画像やセンサーからのデータを通じて<その場で見る>ことが可能となる。

コスト・時間・安全面すべてで大幅な改善につながったという。

FAAによる全米規模の特別許可を取得

通常、アメリカではBVLOS(目視外飛行)は厳しい規制が設けられている。
しかし、『Halo』の安定性と実績により、アメリカの複数のクライアントがFAA(連邦航空局)からBVLOS(目視外飛行)飛行許可を取ることに成功。

これは、今後の広域インフラ点検において極めて画期的な認可だとしている。

そして、Elsight社はこのプロジェクトを通じて、

  • 都市部から遠く離れたパイプラインの上空を、安全かつ長距離にわたりドローンで自律飛行させる
  • ガス漏れや破損の兆候をセンサーで検知し、リアルタイムで地上に送る
  • 点検作業の安全性・効率・スピードを飛躍的に高める

ことにより<目の届かない場所でもつながり続ける>という、インフラ点検における最重要な価値を提供し続けるとしている。

英国の鉄道インフラ点検・監視。「都市部」で行う難しさをクリア

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ドローンを使って鉄道の点検や監視をもっと安全に・効率的に行いたいと考えていた英国の鉄道会社(Network Rail)。
ただし、そのためには「目で見えない場所までドローンを飛ばす=BVLOS(視界外飛行)」という、法律的にも技術的にも難しい課題があった。

BVLOS(目視外飛行)専用のフライト管理システムの開発サポート

従来は視界内でしか飛ばせなかったドローンを、見えない場所まで安全に飛ばせるようにするため、Dronecloud社と連携して専用の飛行管理ソフト(Flight Management System)を進化させた。
これにより、どこに飛ばしたか、どのくらい飛行したか、緊急時の対応も含めて一括で管理できるようになった。

通信が複雑な「都市部」での試験運用を実現

英国バーミンガムの鉄道指令センターにBVLOS(視界外飛行)のテスト環境を設置。
通信環境が複雑な都市部でも、『Halo』のマルチリンク通信(LTE/5G/衛星)を使って、安全で安定した飛行を実現した。
       

リアルタイムでドローンからの情報を地上に届ける

ドローンが空中で撮影した映像やセンサーデータを、リアルタイムで地上の管理チームに送信。
これにより、現地に人がいなくても「今、何が起きているか」をその場で把握し、即座に対応することができるようになった。

本部一括管理の運用モデルを整備

ドローン運用を各地でバラバラに行うのではなく、本部で一括管理する運用モデルを設計。
例えば「〇〇駅周辺のドローン点検をリモートで担当者が操作・モニタリング」といったことが可能に。

英国民間航空局に準拠した仕組み作り

BVLOS(視界外飛行)飛行は本来とても制限が厳しいものだが、Elsight社の『Halo』は英国民間航空局(CAA)と協力し、安全に準拠したBVLOS運用モデルの認可を可能にした。

Elsight社の『Halo』はこのプロジェクトを通じて

  • ドローンを“見えない距離まで安全に飛ばせる”仕組み整備
  • 都市部での実験飛行の実現
  • ドローンの飛行を管理・活用するモデルの構築

に成功。
これにより、今後イギリス全土での鉄道インフラ点検に、ドローン/UAV(無人航空機)が本格的に導入される道が開かれたという。

日本における『Halo』技術実装の可能性はロボットや車両にも

最近は店舗の中で働くロボットも珍しくなくなった。
こうしたロボットのほか、無人での土木工事、公共安全、工場や倉庫での作業、インフラ点検、災害対応などを行う無人地上車両(UGV)などにも適している。

日本のような技術大国において現在盛んに研究されている領域への実装も想定して作られているという。

日本ではナビコムアビエーション社とのコラボレーションで拡販予定

Elsight社は、日本国内での製品販売・技術サポートにおいて、総販売代理店であるナビコムアビエーション株式会社との連携を行っている。

すでに、Elsight社は『Halo』の日本展開を拡大。
災害対応、防災、物流、インフラ点検など、信頼性の極めて高い通信を必要とする分野に重点を置いているという。

ナビコムアビエーションは、長年培ってきた航空・通信分野における専門性とネットワークを活かし、既に複数の国産ドローンメーカーや自治体との関係を構築。
今後も引き続き国内におけるドローン/UAV(無人航空機)社会実装の加速に貢献していくとのことだ。

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出典

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