消防にドローンをいち早く導入!大和市消防本部に聞いた「ドローンと消防の未来」

火災現場で、煙が充満し、状況が見えない。そんな時、消防隊員が頼りにするのは、なんとドローンだ。神奈川県大和市消防本部は、いち早くドローンを導入し、災害現場での情報収集に活用している。一体、ドローンはどのように消防活動を変えているのだろうか?
大和市消防本部警防課 消防司令長の大内一範さんにお話をお伺いした。

ドローンを導入したきっかけとは?

「ドローン導入のきっかけは、熊本地震での支援活動でした。被災地の惨状を目の当たりにし、より迅速かつ正確な情報収集の必要性を感じました。その中でドローンが大きな力を発揮するのではと考えました。」と大内司令長は語る。

青山学院大学古橋教授との出会い

当時、大和市では市として青山学院大学と包括協定を結んでいました。そこで災害地図の制作をを行うNPO法人クライシスマッパーズジャパンの代表でもある古橋大地教授と出会い、災害時のドローンの有効性を再確認し消防本部としてのドローン導入の流れが出来た。

熊本地震、そして古橋教授との出会いから、全国的にまだ消防でのドローン導入の事例は少なかった2016年から大和市消防本部のドローン導入は開始された。

消防とドローン

消防とドローンの組み合わせというのは一般的にはまだすぐには結びつかない。実際に大和消防本部ではどのようにドローンを実際に活用しているのか伺った。
大内司令長は「現状では消防の設備としてドローンというのは認知されていませんが、我々は消防車やホース等と同様に必須の資機材になっていくと考えています。ドローンを必須の資機材と考え活用することで、より迅速で正確に現場に何台の消防車が必要なのか?どのような資機材を投入するのかなどの災害トリアージも可能になると考えています。」と語ります。

配備状況

大和市消防本部管内には5つの消防署があり各拠点に2台ずつと本部に3台の計13台が配備されている状況。内訳は各署にDJIのマビックが2台ずつの計10台と本部にはマビック2台とDJIのマトリスが1台だ。
大和市消防本部のドローン画像
マビックは現場に携帯し、現場での情報収集ツールとして利用されている。一方マトリスは火事の通報を受けた際に本部から上空に飛ばし、通報があった住所方向をカメラで確認し、いち早く現場を確認する火の見やぐらのような役割を持っている。また、大規模災害時には、スピーカーが取り付けられている為、避難誘導や呼びかけなどにも利用できる仕様となっている。

大和市消防本部独自の養成プログラム

大和市消防本部では現在212人の職員がドローンを操縦できるパイロットとして登録されている。
独自のドローンパイロットの養成プログラムを導入し、全ての隊員が配属された時点で受講するように整備されているという。
プログラムの受講で独自のライセンスを発行しており、プログラムを受講し合格した隊員はライセンスを取得できるようになっている。

▼大内司令長の制服右肩に付けられているのが独自のライセンス所持の証だ
イメージ画像

「プログラムに関しては、当初古橋教授の協力の元で作られ、その後は独自に進化をさせながら運用しています。近年ではドローンの国家資格も登場し、それらを取り入れることも検討しています。」

ドローンを使った訓練

パイロット養成プログラムだけではなく、しっかりとドローンを活用出来るよう、訓練にもドローンを使った訓練を取り入れている。
近隣自治体との合同訓練でも、実際の火災現場や災害現場でも生かせるようドローンを取り入れた訓練が行われている。

▼実際の合同訓練時の様子
イメージ画像
サーモカメラを利用した火災現場の状況確認

イメージ画像
火元の特定の為にもサーモカメラが活躍します

実際の現場での活用

ドローンを実際の火災現場や災害救助の現場でどのように活用されているのかを大内司令長にお伺いした。

「実際の火災現場ではサーモカメラによる火元の確認に活用しています。実際の火災現場では、煙や構造物により、目視で火が燃えているか確認できない事が多いです。ドローンを使いサーモカメラで撮影することで目視では分からない火元を確認できるため、早期の消火活動に非常に役立っています。」と大内司令長は語ります。

▼実際に火災現場で活用した際の画像
イメージ画像
地上からでは煙で確認できない火元も上空からサーモカメラで撮影することで位置の特定が可能だ

イメージ画像
こちらも肉眼では確認が困難なダクト内の火元を上空から確認が出来た

能登地震での活躍

2024年1月1日に発生した能登地震、全国の消防も応援に駆け付けた。その際に、大和市はドローンを携帯し現場の応援に向かったとのこと。
現地での情報収集に非常に役に立ったと大内司令長は語ります。
「能登地震の救助応援の際には、何かの役に立てばと思い、ドローンの携帯を指示しました。現地では道路状況や被災地の状況を把握するのにドローンが力を発揮してくれました。」

今後の活用に関しては

今後は消防でどのようにドローンを活用できそうかお伺いした。

「現状の消防活動での利用はもちろん、どのようの利用方法があるのかは情報収集はしています。ドローンの進歩によって我々が導入した当初では出来なかったことも出来るようになってきています。例えば、マトリスでのカメラは住所情報を入れると自動でGPSでその方向にカメラを向けてくれます。更には優れたズーム機能もあるので、通報があった際に、通報の住所を入れることで、通話者からの情報だけでなく、実際の現場を映像で確認できるという事も可能になってきました。」と大内司令長は語ります。

日々進化するドローンに合わせて大和市消防本部では情報収集も行い、消防での活用法もいろいろと進化しており、今後は益々消防にドローンは欠かせない装備となってきそうだ。

関連記事

KDDIスマートドローンが描く未来:ドローンが変える私たちの生活

空飛ぶロボットが私たちの生活を劇的に変える! 皆さんは、空を自由に飛び回るドローンが、私たちの生活をどのように変えることができるか想像できますか?SF映画の世界でしか考えられなかったことが、今後、現実になるかもしれません […]

  楠本達也

現代における技術の黒船:内田孝幸教授が語るドローンによる画像解析の未来

2024年7月13日、東京工芸大学の厚木キャンパスでは工学部のオープンキャンパスが行われました。 DroneGuideではオープンキャンパスの取材を行うと共に、同大学の教授である内田孝幸先生や研究室の学生さんにお話を伺いました。

  yoshi

ドローンのプロフェッショナルが描く『心 × 躍る × 未来』の実現への道。fly株式会社の挑戦と展望を聞く

ドローンでのライブやフェスの撮影といったエンターテイメント業界で活躍するだけでなく、中高生といった次世代への教育からドローンを用いた新規事業を考えている企業へのコンサルティング等、ドローンにまつわる事なら幅広くプロフェッショナルとしてかかわっている「fly株式会社」(以下、fly社)。 今回は、同社の代表取締役社長である船津宏樹氏に、ドローンにまつわる業務から同社の考え、そして使用しているドローンの機体自体についてお話を伺いました。

  yoshi