IDA、千葉県東庄町にてドローンによる線路上空のガソリン輸送に成功

一般社団法人国際ドローン協会(代表理事:榎本幸太郎)(以下、IDA)は、千葉県東庄町(町長:岩田利雄)と共同で災害発生時の物資輸送を想定したドローンの実証実験を2025年2月5日と7日の2日間実施した。 本実験は、災害時における迅速かつ安全な物資輸送の可能性を探ることを目的としたもので、地域の災害対策とドローン技術の社会実装に向けた重要なステップとなるとしている。

災害発生時の物資輸送を想定したドローンの実証実験について

イメージ画像
立入管理措置を講じて北総育成園に荷物をおろす様子

実験内容の詳細

今回行われた実験では、発電機とガソリンを東庄町役場から町内の病院までドローンでの輸送が行われた。

飛行ルート①
東庄町役場 → 東庄病院(約3.6km)

飛行ルート②
東庄町役場 → 社会福祉法人さざんか会 北総育成園(約2.8km)

輸送物資
発電機およびガソリン(総重量30kg)

使用機体
DJI Flycart30

体制
一等無人航空機操縦士2名(目視内限定解除、最大離陸重量25kg未満の限定解除も取得)

実証実験の背景
東庄町役場や各避難所には緊急物資を備蓄しているが、道路が寸断されてしまうと陸送では緊急物資の輸送が出来ない可能性がある立地にある。
今回の実験は、そのような緊急事態に備えて電力供給の要となる発電機と燃料(ガソリン)を安全かつ迅速に届けるための検証となった。

今回、発電機とガソリンが輸送されたが、この輸送したガソリンは一台の発電機を約20時間稼働することが可能となっている。
これにより約4,800台のスマートフォンを充電できる電力を供給可能となる。
スマートフォンは今やインフラの一部であり、自治体からの連絡はもちろん、情報検索や連絡手段として必要不可欠である。
分断された地域でも電源を確保し、連絡手段を維持できるようにすることは、迅速かつ的確な救援・支援のために非常に重要であり助けることができる命を少しでも増やすことに貢献できると考えられている。

東庄町では、これまでに8つの物流ドローン空路を構築しており、町内の全ての避難所・災害物資保管倉庫・東庄町役場を結ぶルートが構築されている。
大規模災害時でもドローンを活用することで、地上交通が寸断されても必要な物資を必要な人に搬送することが可能。
特に医療施設への物資輸送は被災地支援において最優先事項となるため、緊急時にこの空路が活用できる体制の整備を推進している。

技術的ハイライト

線路上空を安全に横断
ドローンは、町内を走る線路上空を安全に横断して約5分で目的地に到達。
飛行高度の維持とルート最適化により、安全性を確保した。

線路の上空の飛行は事故が起きた際の影響が非常に大いため通常許可されるものではなく、飛行するためには万全の体制を整える必要がある。
こうした背景のもとドローンの運航方法・運航管理の強化を図ることで、安全に線路の上空を通過するという課題を乗り換え、実証実験を行った。

線路の上空を通り物流輸送を行うのは日本でも初めての試みとなる。
そして線路の上空を越えて緊急物資輸送を行ったことは災害時や医療物資の緊急輸送を確立したという点で大きな意義がある。

・発電機及びガソリンの輸送
ガソリン輸送は、特に災害時や地理的に孤立した地域において、生活や復旧活動を支える重要なインフラの一つである。
従来の輸送手段が途絶えた場合、緊急車両の運行が困難となり、住民の生活や救助活動に深刻な影響を及ぼす。
今回のドローンによるガソリン輸送は、このような状況に対応できる新たな手段として、大きな意義を持っている。

しかしながら発電機及びガソリンの物流ドローンによる輸送は、万が一の事故発生時に重大な影響を及ぼすため、危険物の輸送として航空法の規制の対象となっている。
今回の実証実験では、安全管理体制を万全に整え、法律上の要件を満たしたうえで法律上の許可を取得し、慎重に飛行を実施。
近年、ドローンの機体性能が大幅に進化し、安全にガソリンを輸送する技術が確立されている。
飛行安定性や耐久性の向上、精密な運航管理システムの導入により、危険物輸送の安全性が飛躍的に向上した。
本実証実験は、こうした技術の進歩が実運用に貢献できることを示す重要な事例となった。

・ウインチを使った吊り下げ式物資輸送
着陸が困難な状況を想定し、ホバリング状態からウインチを使って物資を安全に降下させる方法を実証した。
これにより着陸場所を十分確保できない場所への物資の輸送が可能になった。
この技術は、山間部や災害時の被災地など、従来の輸送手段では到達が難しい場所への支援に大きく貢献する。

・リアルタイムでモニタリング
ドローンからの映像と飛行ルートは、町役場にてリアルタイムでモニタリングされ安全な飛行が確認された。
役場の職員や運航スタッフはパソコンやスマートフォン等を通じて、ドローンが今どこを飛んでいるかを地図上で確認ができ、ドローンのカメラの映像をリアルタイムで視聴することができた。

これにより、現場の状況把握がこれまで以上に迅速かつ正確に行えるため、本システムの導入により、業務の効率化や安全管理の強化が期待されるとしている。

今後の展望

東庄町では、買い物が困難な方への日常的な配送にもドローン技術を活用する計画が進行中である。
IDAは、引き続き災害時の物資輸送や地域課題の解決に向けたドローン技術の可能性を追求し、安全かつ効率的な物流ソリューションの開発・提供を進めていくとしている。

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出典

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